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熱狂していたはずの観客が１人、また１人として会場を後にする。
やがて誰もいなくなった観客席に楽器の音とボーカルの声が空しく響いた。
ベースの女のお腹が膨らみ、育児に専念するため脱退。
ギターの髭男がロックＴシャツを脱ぎ捨ててスーツに着替える。就職のため脱退。
ドラムの坊主男が「お袋の肩を叩きたい」と言ってビートを止める。帰省のため脱退。
取り残されたボーカルの男は歌い続ける。ロックンロールは鳴り止まない。
やがて、握っていたはずのマイクが１枚の紙へと変わった。ひろげてみると多額の借用書。
ボーカルは潰れた声で歌う。
「ロックンロールが……鳴り止んだ」
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