隔離

2/5
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ
いつも周りからは「暗い子」と言われていた。 これは本人にもわからないのだが、オレの回りはいつも霧がかかったようにヒンヤリとしているらしい。 「霧野君は宇宙人みたい」「エイリア学園かよォ!」どこの誰が言い出したかわからない噂によってオレはもやもやとした霧の中に“隔離”されていた。 『全国Jr.ピアノコンクール 最年少で優勝 神童拓人くん』 あいつだって似たようなものだ。いや、家柄、才能に恵まれているけれど泣き虫でいじめられやすいあいつは、オレよりも強く、深い霧の中に“隔離”されていたのだろう。 オレは毎日がシカト三昧だから、いじめっていうものの存在を信じることすらしなかった。人が話しかけてくれるならまだ、いいじゃないか。近くに人がいてくれるならいいじゃないか。 もちろん違う。いじめは許されることじゃない。でも、それを知らないほどにオレは一人だった。 いじめを初めて見たときが、あいつと初めて会ったときだ。いじめを珍しがって近づいたオレの姿を認めると、いじめっ子達は雲散霧消した。 「うぇっ…ひぐっ…うぅっ……あ、あれ…?」 このいじめられっ子は泣いていて気付かなかったらしい。確かに見ていてイライラするなあ、これがいじめる気持ちか、なんて思った。 「きみがおいはらってくれたの」 「そんなんじゃないよ」 「でも、君が来たからみんな逃げちゃったんでしょ?」 こんな笑顔、初めて見た。さっきまでイライラしてた気持ちなんて吹き飛んだ。っていうかそんな気持ちあったっけ? 「友達になってくれる?」こんな質問も初めてだったから嬉しくて。 「うん。」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!