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あいつらは本当に簡単にやられてくれた。
腹の柔らかいところや、鳩尾、顎とか、傷をつけないぐらいに急所を殴れば、相手はすぐに痛がってくれた。サッカーボールで学校を粉砕できるご時世だ、無理もない。
そこでやめてもよかったけど逆上したオレはあいつらが二度とこないようになにか決定的な衝撃を与えたかった。
足元に落ちていた小瓶。
わざとらしいドクロのマーク。
何でそんな物がそこにあるのか解らなかったがオレはそれをあいつらに向かって投げつけた。
逃げる途中だったあいつらには当たらなかったが、足元に当たったそれが割れると中から真っ白な霧が。
「うああぁぁあ!」
「なにも見えないぃ!」
相手は錯乱したのか知らないが、泣いたり転んだりしながら逃げていった。
たくとの方を振り返ると目に一杯涙をためていた。
「ありがとらんちゃん」
「泣いてばっかりだな」
霧の中に届き、俺を解放するたったひとつの旋律。
たくとは、その日からおれの「全て」になったんだ。
後日。
たくとを守りながら戦ったオレは伝説化され、オレは「子連れ狼」と呼ばれたのだった。
小学生で。
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