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――1、俺たちの商店街
◇◇
「いい案はなんか無いものか」
「なんかあったらとっくに発言しとるわ」
「ケーキ屋のノブはどこ行った?」
「パチンコ」
「ノブさんも好きだねえ、最後に勝ったのっていつだったっけ?」
「二ヶ月前とかじゃなかった? でも確かそのお金も次の日につぎ込んじゃってた気がする」
「バカだねえ、あいつは」
秋津商店街公会堂。
昭和の初めに建造されたそこは、年期の入った真っ黒な丸太を大黒柱にした木造平屋。
開け放しにされた入り口に、全開に開け放たれた窓。季節は夏。
私たち、秋津商店街役員、七名は日曜の昼間という最高にのんびりしたい時間帯に、畳張りのこの広いだけの部屋に集められていた。
「のりちゃん、麦茶のお代わり要る?」
「あ。いえ、まだ半分くらい残ってますんで……」
「そうかい。悪いねえ、のりちゃんはまだ高校生なのに、こんな年寄りの集まりにかり出しちゃって」
時計屋のおばちゃんが、申し訳なさそうに笑いかけてきてくれた。
半分だけ残っているグラスに目をやれば、水滴がビッチリとグラスに浮き上がっていた。
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