3人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
時刻は午後1時。
それほど多くはない人が行き交う商店街を俺は歩いていた。
「さて、これからどうするかな……」
なにもやることがない。
と言っても“この街”に戻ってきてから毎日がそんな状態だ。
“あっち”に居たときは休む暇も無く仕事をしていた。
(状況が変わるとなにをすれば良いのかわからなくなるな……)
無性になにかをしたい衝動を抑え、伏せた顔をあげると丁度スーパーマーケット『ヒロイナ』の看板が見えた。
「そういや冷蔵庫の中身、空なんだっけ……。あまりこの店は気乗りしないけど買って行くか」
そう呟き店内に入る。と同時に、足下にかなりの不快感を感じる。
それはさながら水の上を歩くような感覚。
その適度な張りと吸収感のある床を歩いていると、店員が売り物を床に落としている光景が見えた。そしてその周りには売り物目当てで集まる客。
まるで、成金がばらまいた金を貧乏人が拾うというのに酷似している。
ハッキリ言って異様。
このスーパー『ヒロイナ』は、各ブロックに別れた店員が売り物を床に落とした後客がそれを拾い、満足したらレジに持って行き精算というシステムだ。
なんでそんなにおかしなシステムかというと「平凡過ぎるのはつまらない」らしい。
因みに床はどんな高さから物を落としても衝撃を吸収する特注品だとか。
最初のコメントを投稿しよう!