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「お継母さんが連れていったのは、やっぱり私なのかなぁ。赤ちゃんは、ななちゃんって呼ばれてたわけだし」
和ちゃんと一緒に縁側を歩いていたとき、私は弱気に呟いた。
「奈月は本当に他の時空にはじかれたのかな。生きているかな……」
裏庭に干された洗濯物が、のどかな風にはたはたと揺れている。
「奈月、冒険家だからな。拾われる前にハイハイしていったのかも」
和ちゃんが気休めを言った。
本当、奈月はどこに行ってしまったのだろう。
こうまで手がかりがないと、溜め息が口をついて出る。
和ちゃんも、隣で同じように息を吐いた。
「あっ」
そのとき、私の目に入ったものがあった。
庭の洗濯物だ。
「奈月に着せていた服よ、あれ」
大きな服に混じった、愛らしい赤ちゃんの服。
継母の好む地味な服が物干竿に並ぶ中、一着だけ、淡い無地のピンクが顔を出している。
おかげで、ふと目に止まったのだった。
縁側に放置されていた草履を勝手に履き、庭に出る私。
「おい。目立つことはするな」
「ただ見るだけよ」
引き止める和ちゃんに返して、私は洗濯物に駆け寄った。
間違えようもない。
それは、私が奈月のためにイニシャルNを縫った服だった。
一ヶ所刺繍が歪んでいる位置までそっくりそのままだ。
「棚の上に制御装置が置いてあるぞ」
家の奥から、和ちゃんが驚嘆の声を飛ばしてくる。
奈月が継母の世話になっているのは決定的だった。
「お継母さんが連れていったのは奈月だ」
再び和ちゃんと声が揃った。
私は語尾に「装置呑み込んでなくてよかった」とつけ加えた。
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