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「お継母さん、元気?」 「ええ、なな子も元気そうね。それに、奈月ちゃんの大きくなったこと!」  私は娘の奈月を抱えて椅子にでんと座り、机上の多機能TVフォンにほほ笑みかけた。  TVフォンの画面には、豊かな白髪、目尻の下がった継母の優しげな顔が映っている。  すっかりしわが増えて、穏やかな笑顔が強調されていた。 「ジャーン、あたち、采原奈月でーちゅ。生まれてから八ヶ月が経ちまちた」  最近のTVフォンは性能がよくて、画面はTVを見るように滑らかだし、受話器がなくても鮮明な声が届く。  私は奈月の小さな右腕を取り上げ、画面に向かって振らせた。  もちろん、しゃべっているのは私だ。  この間にも奈月は「うあーあうあー」などという謎の語を口ずさみながら、外の世界へ冒険に出ようともがく。 「こら奈月。おとなしくなさいよ」  ハイハイをするようになってからは、少しも目を離せなかった。  ベビーベッドを組み直して作った囲いに入れても、油断すればすぐに出る。  奈月の冒険好きにも困ったものだ。 「ふふふ。私がなな子を拾ったのも、奈月ちゃんくらいのときだったわ。ほんと、元気なところまで瓜二つねぇ。懐かしいわ」  我々親子の奮闘に、継母は画面の向こうで朗らかに笑った。  そう。  実はこの私、まだ奈月くらいの頃、一人で暮らしていた継母に拾われたのだった。  継母は夫に先立たれた上、子供もいなかった。  そのとき私が着ていた服には、手縫いでNの字が入っていたらしい。  継母は私のイニシャルだと思ったようで、取りあえず私を「なな子」と呼んだ。  私の親はついに現れなかった。  そして、継母に引き取られた私は「なな子」になった。
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