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さて、歪んだパズルのピースは、次のように組み合わせることができる。
ピース自体、歪んでいるのかもしれないけれど……。
一つ。
N字刺しゅうの服について。
継母に拾われた時、私はN字刺しゅうの服を着ていた。
私は奈月の服にも、迷子の手がかりになるよう同じイニシャルの刺しゅうをしていた。
加えて継母は先ほど、奈月を「ななちゃん」と呼んでいた。おそらく、私が奈月の服に縫ったイニシャルのNを見たからだろう。
私も同じ理由で、かつては「ななちゃん」と呼ばれていた。
一つ。
奈月が継母に拾われたと思われる時間と場所について。
私は時空間移転制御装置の座標設定を、自分が継母に拾われた瞬間に設定していた。
二十五年前、ある日の正午、継母の家の玄関前に。
ほんの、遊び心だった。
奈月はそこに飛行し、私が拾われたのと同じ瞬間、継母に拾われた。
一つ。
継母に拾われた時の月齢について。
私が継母に拾われたのは、ハイハイの頃だったという。
奈月も同じだ。現在生後八ヵ月、丁度ハイハイの時期にあたる。
私と奈月のピースを並べてみると、「偶然だ」と一蹴するには、同じ形のピースが多すぎやしないだろうか。
継母に拾われた日時も、発達状況も、服に縫ったNのイニシャルも、「ななちゃん」という呼び名も……。
どう考えても、偶然の一致にしてはできすぎている。
「なな子?」
「なんでもないよ、和ちゃん」
私はこの恐ろしい一致を口にすることができなかった。
私は奈月の成長した姿で、私の親もなな子と和ちゃんだった、という矛盾した結論。
そうとしか思えないほど、奈月と私は同じ体験をしていた。
奈月は二十五年前に飛び、なな子と命名され、継母の元で成長する。
このなな子はやっぱり和ちゃんと結婚し、奈月を産む。
そして奈月は二十五年前に飛び、やっぱり継母になな子と命名されて成長する。
私は、二十五年という時間で組み立てられた牢の中を、ぐるぐる回っているのかもしれない。
では、循環の輪を壊し、奈月を連れ帰ったら?
今の私はどうなるのか。
存在そのものが…………?
悪寒が背筋を昇ってきた。
震えは唇にも伝ってきた。
連動するかのように、唇は声を形にしない。
口に出したら本当になってしまいそうで。
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