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代わりに私は呟いた。
「奈月を連れて帰ろうとしたら、私たちによくないことが起きるかもしれない……でも私は」
決めなければならない。
それでも奈月を連れて帰るか否か。
もちろん、私の答えは決まっている。
「なな子」
私の心境を察してくれたのだろうか。
和ちゃんは、私をぎゅっと抱き締めてくれた。
「お前のお継母さんがよく言っているよな。なな子と奈月は、顔つきやアザの位置から笑い方まで、何もかもが同じだって。似ているんじゃない、同じなんだって」
「うん」
そして。
「奈月は諦めた方がいい」
和ちゃんは言った。
潰れた喉から無理に音を出すような、とても苦しそうな声なのに、ひどく乾いた響きに聞こえる。
……何を、言っているの?
「奈月を連れて、お弁当持って、星を見にいくんでしょ?」
和ちゃん、奈月がかわいくないの?
あたたかい腕の中で、私は和ちゃんにしがみついた。
しがみついて、確かめるために問いかける。
私は、和ちゃんの今の言葉を打ち消してほしかった。
だけど非情にも和ちゃんは続ける。
「奈月がなな子だとする。だが俺たちは、歴史上、奈月(なな子)を引き取りに来なかった。この事実が示唆することは何だ?」
自分たちが奈月を諦めたか、強引に連れ戻そうとして事故に遭ったかだ、と和ちゃんは怒ったように言った。
時間の織りなす罠(しかけ)に、和ちゃんも気づいているようだった。
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