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鳥籠のある部屋の隅に小さな白い机がありその上には薄いピンクの花の宝石が付いた指輪が置かれています。
「じゃああの小さな机の上にある可愛らしい指輪を貰えるかな?」
鳥は小鳥に訊ねました。
鳥はその可愛らしい指輪を自分の妻にプレゼントしたいと思ったのです。
小鳥は答えました。
「もちろんです。こんなに素晴らしい木の実を頂いたのですから」
鳥は小さな白い机の上にとまり指輪をくわえました。
「それじゃあ遠慮なく」
鳥はオリーブ色の翼を羽ばたかせ茜色の空へ飛んでいきました。
それはとても美しく小鳥は長い間その光景を眺めていました。
夕日は鳥籠の中を赤く染め上げていき少しずつ暗くなっていきます。
そして最後のひとしずくの光を山の向こうへ落とし、辺りはひっそりと静まり返りました。
やがて空いっぱいに星が瞬く頃小鳥は眠りにつきました。
塔の周りをコウモリたちが虫を追いかけて飛び回っています。
草むらでは虫たちが競いあうように恋歌を歌っていました。
やがて東の空の縁が紫色に染まりだんだんあたりが明るくなってきました。
草むらの虫たちはいつの間にか歌うのをやめています。
鳥籠の中にもまぶしい朝日が差し込んでいます。
朝日は小鳥の褐色の羽を暖めました。
小鳥は眩しさを感じ羽の中に埋めた頭を上げました。そして体を震わせて瞬きをいくつかしました。
塔の小窓の縁に朝露がキラキラと輝いています。
鳥籠の床には昨日の木の実が少し残って転がっていました。
小鳥は床に降り木の実を啄みました。
それは昨日のように甘く香ばしい味がしました。
空はうっすらと雲がかかり柔らかい光が地面を照らしています。
小鳥は昨日見た夢を思い出しました。
とても幸せで心地よい空を飛ぶ夢です。
小鳥はその幸せな夢の歌を歌いました。
小鳥の高く透明な歌声が空気に溶けていきます。
「素敵な歌だね」
紺色の背中に茶色の胸の鳥がそう言って笑いました。
小鳥はびっくりして歌うのを止めました。
鳥は真っ直ぐ小鳥を見て言いました。
「歌わないの?とても素敵な声なのに」
小鳥は驚いたように鳥を見つめました。
そして少し戸惑いながらまた歌い始めました。
他にも色々な鳥が来ました。
鳥たちは小鳥の歌を口々に褒め称えて木の実や草の実や虫をくれました。
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