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それから勇者はミーアと共に暮らし始めます。
ミーアは改めて見ると身体の至る所に傷があり、跡が残るであろう深い傷も少なくはありませんでした。
勇者は薬草を採りに深い森へ、食料を捕りに険しい山へ、渇きを癒すため綺麗な水の湧く遠い泉へ。
動けないミーアのために。
そんな勇者の看病の甲斐有って、ミーアもだんだんと体力を取り戻していきました。
最初は怯えていたミーアも、少しずつ勇者に笑顔を見せるようになり、そんなミーアを見て笑顔になる勇者。
勇者は確信します。
この女の子は村人達に迷惑をかけるような存在ではない。
見知らぬ土地で傷だらけで一人寂しがってた、ただの女の子だと。
傷が完全に癒えたら村人達に見付からぬ場所へ彼女を逃がそう。
そう決めました。
浅い傷はほぼ完治したある日、ミーアは勇者を屋上へと連れ出します。
勇者は訳も分からずついていきました。
季節は夏。
城の中は外からの陽射しだけでは補えないほど暗く、屋上に出た瞬間急に降り注ぐ陽の光に目が眩む勇者。
少しずつ目を開けていくと、そこには一面に咲き誇る花畑が。
どうしてこんな場所に花が?
なんて頭に浮かばないほどの美しい景色。
この時期に咲かないはずの花。
まさに四季の全てを詰め込んだ花畑。
この世界の全てが、ここにあるように見えた。
ミーアは笑う。
君に喜んでもらいたくて、頑張ったんだ、と。
勇者は言葉を返すことも出来ず、ただただ流れる涙を手で拭い………やっと一言、一言だけ。
ありがとう
と言うことが出来ました。
知らなかったとはいえ、最初はミーアを倒すのが目的で来た勇者のためにこんな綺麗な景色と澄んだ笑顔を見せてくれたミーアを想って。
ここを二人だけの場所に。
ずっと変わらない二人だけの場所にしようと、何故か笑いながら涙を零すミーアと約束をしました。
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