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ある朝、ミーアは言いました
驚かせてしまった村人たちに、花を届けたいと
傷もある程度癒え、動けるようになったミーア
迷惑をかけて申し訳なかったと、自分が今出来る精一杯のお詫びに、四季の花を届けたいと
勇者は言葉を詰まらせました
勇者は、村人たちには魔王はいなかったと伝えていたから
村人たちは魔王討伐に名乗り出た勇気ある少年を疑うことなく、その言葉を信じていました
でも
独りだったこの心優しい少女が、村の皆と打ち解ける良い機会になるかも知れない
友達が、出来るかもしれない
勇者は、ミーアの言葉を承諾することにしました
花を全て村に届けることは出来ないから
四季それぞれに咲く、それぞれ一番綺麗な花で花束を作ることにしました
どの花が良いか迷いながら選んでいく少女の姿は、とても嬉しそうで
勇者も少女と並んで一緒に花を選びます
でも、ミーアは時折辛そうで、ある程度治ったとはいえまだ体力は戻っていないから
この日はどの花にするかだけ決めて、そのあとは静かに眠りについてしまいました
屋上で勇者は一人、考えます
魔王と呼ばれた少女は、なぜ傷だらけだったのか
なぜこの城に来たのか
代償とは、なんなのか
勇者は名前以外、ミーアのことを何も知らない
勇者は、謝罪の言葉を紡ぎ、淡いオレンジの花と
鮮やかな水色の花を摘み取りました
その二つの小さな花を指に巻いて、見つめます
霞んでいく世界
枯れることのない、永遠を刻んだ指輪が二つ
この花の指輪を指から外して、勇者は大切にしまいました
もしミーアが村に迎え入れられたなら
ミーアが村に居てくれるなら
少女は自分が支えていこう
これから先の遠い未来をずっと
今まで二人が過ごした時間が短くても、少女のことを何も知らなくても
勇者はずっと少女を守っていきたいと、願っていました
勇者にとってミーアと過ごす時間は、この世界は
これから先も無くてはならない
かけがえのない大切なものとなっていました
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