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 いらっしゃい、お嬢ちゃん。トイレは奥だよ。 そう言われて、レベッカは顔をしかめた。  確かに、レベッカは見ただけでは二十歳を超えているようには到底見えない。だが、女に向かってトイレとは何事だろうか。ならず者にも、ならず者の礼儀というものがあるはずだ。 「お嬢ちゃんはやめろよ、マスター。こちとらもう立派なレディだ」 言いながら、レベッカはカウンター席に座る。その背後では、町のならず者達が集まってカジノを興じているらしい。コインの転がる音がする。 「レディがこの町で生きてくにゃ、方法は2つしかないぜ。パン屋になるか、娼婦になるかだ」 マスターは言いながら、拭きかけていたグラスを置き、レベッカと向き合った。目の前の小さなレディに、少なからず興味を示したらしい。 「残念ながら、もう就職済みさ。賞金稼ぎ(マン・ハンター)さね。」 ピタリ。と、後ろでコインの転がる音が止まる。レベッカは、ゆっくりと、懐のブレザーへ手を伸ばした。 「……後ろのゴロツキのリーダー気取りの兄ちゃん、二万ダラーの安物だが、掃除対象だぜ」 マスターが、小声で伝える。 レベッカは礼の代わりにテンガロンハットを目深に被ると、スックと立ち上がった。 「おい、お嬢ちゃん。」背後から、声がする。同時に、後頭部に冷たい感触も。 「金目のもの捨てて、走ってママの所へ逃げな。こちとら、賞金稼ぎは商売敵なんでね」
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