転校してきた女の子

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常盤台中学。 学園都市の中でも5本の指に入る名門校であり、同時に世界有数のお嬢様学校。 共用地帯『学舎の園』を形成する学校の一つである。 義務教育終了までに世界に通じる人材を育成する、が基本方針だ。 資料によれば生徒数は200人弱でレベル5が二名、レベル4が四十七名、それ以外は全員レベル3。 在学条件の一つにレベル3以上である事が含まれているとんでもない学校。 全生徒の能力干渉レベルを総合すると、生身でホワイトハウスを攻略出来ると噂されているらしい。 全寮制で、寮は学舎の園の内部と外部に一つずつ存在している。 そんな常盤台中学に転校するため、今日この日、学園都市に一人の少女が足を踏み入れた。 「試験の時に一度来たっきりだけど、やっぱりすごいなぁ学園都市って」 正確には幼少の頃に一度此処を訪れているが、なにせ幼い頃の話しだ、その記憶を少女は忘れてしまっているようだ。 白いワンピースを纏い、青い空にギラギラ輝く太陽に照らされ、キラキラ輝く青みがかった白い髪。 頭の上には麦わら帽子を乗せて、少女は学園都市を歩いていた。 その少女の横をドラム缶のような掃除ロボットが通り過ぎていく。 「さあて……学校はどっちだったかなあ」 正直彼女、鵺坂水澄(やさか みすみ)は迷っていた。 広い学園都市だ、一度来たくらいで道を覚えられる筈もなく。 「まあ、なんとかなるなる。 振り返るな、前を見ろ、下を向くな、上を向け、後ろ向きな思考の先に明るい未来なんてないのですよ」 幼い頃、父親から送られた言葉であり、今の水澄を形作る人生観その物と言って良い程のポジティブな言葉である。 そんな言葉を、ニコニコ笑顔で呟きながら水澄は常盤台中学行きのバス停を探す。 ギラギラ輝く太陽が学園都市を焼く勢いで照らす午後。 暑い午後だったが、鵺坂水澄は涼しげに歩を進めていった。
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