我、天使ニ誘拐サレタリ

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白いカーテンの隙間から一筋の光が部屋に差し込み、真新しいベッドの上で気持ち良さそうに寝ている男の顔に当たる。 じっくりと、且つ確実にそれは、男の睡眠を妨害していた。さらにタイミング良く鳴り響いた目覚まし時計が、男の夢の世界を犯し男の表情を苦悶へと導く。しばらく経って男は遂に目を覚ました。 「ったく……ウルセェな」 男は腕を伸ばして、耳元でけたたましく騒ぐ目覚まし時計を掴んで遠くに投げつける。 壁に当たって、ガシャンと言う嫌な音を立ててようやく鳴り止む目覚まし時計。頑丈だから恐らく壊れはしないだろう。再び静寂を取り戻した男は、ダルそうにゆっくりと上半身だけを起こして、寝癖でボサボサになっている栗色の髪を掻いた。 悪い夢は見ていなかったはずなのに、なぜか首回りと額は汗でベッタリと湿っていた。
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