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『彼は風見川悠(かざみがわゆう)。僕たちキーホルダーの所有者、つまりマスターさ』
『あぁ、あんなのが私の所有者……』
『まあ、僕がこっちに来たときもあんな感じだったからね。よほどしゃべるキーホルダーが珍しかったのかな』
『いや、キーホルダーは普通しゃべらないでしょ』
などとタクとヒナがやり取りしていると、タン、と小気味よい音が聞こえた。すると、先ほどまでパソコン画面に向かっていた変態男もとい悠が、椅子を回転させてこちらを向いた。
「で、キミ、名前は?」
足を組んで右腕を背もたれに投げ出し、ヒナに目線を投げかけて悠は問いかける。
『えっと、私は浅見比奈。悠たんは、変態さんなの?』
「悠た……って、何で初対面で変態扱いされねばならんのだ」
少しむっとなる悠。途中でタクが笑いを入れる。
『まあまあ、これから一緒に過ごすんだからさ』
タクが悠をなだめると、悠は再びパソコンに向かった。
「まあいいや。どうせ、この女体は明日には金に変わるからな」
『ちょ、どういうことよ!』
ヒナは体をじたばたさせようとする。が、やはり動かない。
『ああ、マスターは珍しいキーホルダーを見つけては、オークションにかけて小遣い稼ぎをしようとしているんだ』
『えぇ!? じゃあ、私、売られるの?』
『まあ、大体失敗してるけどね』
タクがいうと、先ほどまでカチカチと鳴っていたマウスの音が鳴り止んだ。
「タク、余計なことは言わなくていい」
再びパソコンをいじりだす悠。
『まあ、明日になれば分かるさ』
またしばらくカタカタとキーボードを叩く音が鳴っていたが、しばらくするとその音も止んだ。
「さて、やることないし、寝るかな」
そういうと、悠はパソコンを閉じ、部屋の電気を消した。
『え、まだ自己紹介が……』
「んなの明日でいいだろ。んじゃ、お休み」
悠はベッドに寝転がると、そのまま静かに寝てしまった。
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