キーホルダーの世界へ

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『まったく、マスターは仕方ないなぁ』  タクは寝てしまった悠に対して、軽くぼやいて見せた。 『仕方ないね。続きは明日にするとして、僕も寝るよ。お休み』 『え、タクたん? ちょっとぉ!』  ヒナはあわててタクに声をかける。 『……』  が、返事が無い。 『もう、一体どうすればいいのよ……』  ヒナはしばらくタクと悠に声をかけたが、まったく返信が無い。  声をかけるのにも疲れたのか、諦めてしまった。  夜の静かな時間。あたりのものは動かず、聞こえる音と言えば外からわずかに聞こえるかえるの鳴き声と、風の音。  そんな環境で実際に過ごすと、何時間も過ごしたような気がするのに、実際には数分と経っていないことが多い。  ヒナは人間の時と同じように寝ることもできず、ただ暗闇の中でぼうっと過ごしていた。  ひとまず、これまでのことを整理してみる。  授業が終わり、コンビニによって、クラスメイトのルタ、ナチと出会う。それから雑貨屋にキーホルダーを買いに行き、その帰りに事故に……  一体どうしてこんなことになってしまったのだろう。一人自問自答してみるが、まったく答えは出ない。  とりあえず、朝になったらタクと悠にもう少し詳しい話を聞く必要があるだろう。  それにしても…… 『ヒマだ……』  いろいろと暇つぶしは考えた。悠の部屋を見渡し、どんなものがあるのか、それを使って自分は何をするだろうか……  ものの数を数えたりしたが、それも長くは続かなかった。 『眠れないのかい?』  ふとタクの声が、ヒナの耳に入った。 『タクたん、寝るっていっても、どうすればいいのか……』 『ああ、そういえばやり方を教えていなかったね。っと、ここじゃあれだから、場所を変えよう』 『え?』  一応、ヒナはどうにかして移動できるかどうか試した。が、やはり動けない。 『場所を変えるって……』 『ちょっと待ってね』  タクはそういうと、何かぶつぶつと言い始めた。何と言っているのかはよく聞き取れない。 『"鍵の平原(キー・フィールド)"、オープン』  タクがそういうと、突然ヒナの意識が遠のいた。
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