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ぱちぱちと、ヒナは立派なケーキに拍手した。
「いただきま~す」
ヒナはそのケーキを手にとり、口にする。が、味がしない。というか、食べた気にならない。
「あれ?」
「ここはイメージの世界だからね。僕らには食べるって概念がないんだ」
「えぇ、つまらないなぁ」
ぶぅ、とヒナは膨れた顔を見せた。
「ははは、でも面白いでしょ。何でも好きなもの出せるんだから」
「でも、食べられないのがつまんないなぁ」
「おなかがすくっていう概念もないから、別にいいんじゃないかな」
「まあ、そうだけどさぁ」
相変わらず、ヒナはつまらなそうな顔をする。
「そういうわけで、ここではイメージで何でも出せるわけだけど、別に用途はそれだけじゃないんだ」
「え、他にも何かできるの?」
目の前のケーキが消滅し、ヒナは一瞬手を伸ばすが、食べられないと分かってやめた。
「まず、他のキーホルダーにある意識を巻き込むことが出来るのさ。僕がキー・フィールドを開いて、ヒナを巻き込んだようにね」
「それって、どういうこと?」
「近くにキーホルダーにされた人間がいたら、その人もこのフィールドに呼び出されるってことさ」
「へぇ、そうなんだ」
ヒナは周りを見渡す。タク以外に誰もいない。
「じゃあ今は、私とタクたん以外にキーホルダーにされた人はいないってことなんだね」
「まあ、もちろん範囲はあるけどね。大体、半径五十メートル以内にいれば、巻き込まれるかな」
「へぇ。そういえば、私たち以外にも、キーホルダーにされた人っているの?」
ここに二人いるのだ。他にいても不思議は無い。
「うーん、一人は知っているかな。後はわからないなぁ」
「タクたんでも、分からないことがあるんだ」
「まあね。他の人を巻き込むことが、あんまりなかったからね」
立っているのに飽きたのか、タクはその場に座り込んだ。ヒナもつられて座り込む。
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