キーホルダーの世界へ

11/15
前へ
/103ページ
次へ
 ぱちぱちと、ヒナは立派なケーキに拍手した。 「いただきま~す」  ヒナはそのケーキを手にとり、口にする。が、味がしない。というか、食べた気にならない。 「あれ?」 「ここはイメージの世界だからね。僕らには食べるって概念がないんだ」 「えぇ、つまらないなぁ」  ぶぅ、とヒナは膨れた顔を見せた。 「ははは、でも面白いでしょ。何でも好きなもの出せるんだから」 「でも、食べられないのがつまんないなぁ」 「おなかがすくっていう概念もないから、別にいいんじゃないかな」 「まあ、そうだけどさぁ」  相変わらず、ヒナはつまらなそうな顔をする。 「そういうわけで、ここではイメージで何でも出せるわけだけど、別に用途はそれだけじゃないんだ」 「え、他にも何かできるの?」  目の前のケーキが消滅し、ヒナは一瞬手を伸ばすが、食べられないと分かってやめた。 「まず、他のキーホルダーにある意識を巻き込むことが出来るのさ。僕がキー・フィールドを開いて、ヒナを巻き込んだようにね」 「それって、どういうこと?」 「近くにキーホルダーにされた人間がいたら、その人もこのフィールドに呼び出されるってことさ」 「へぇ、そうなんだ」  ヒナは周りを見渡す。タク以外に誰もいない。 「じゃあ今は、私とタクたん以外にキーホルダーにされた人はいないってことなんだね」 「まあ、もちろん範囲はあるけどね。大体、半径五十メートル以内にいれば、巻き込まれるかな」 「へぇ。そういえば、私たち以外にも、キーホルダーにされた人っているの?」  ここに二人いるのだ。他にいても不思議は無い。 「うーん、一人は知っているかな。後はわからないなぁ」 「タクたんでも、分からないことがあるんだ」 「まあね。他の人を巻き込むことが、あんまりなかったからね」  立っているのに飽きたのか、タクはその場に座り込んだ。ヒナもつられて座り込む。
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加