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日差しが強い夏空は、しかしその染め上げられたうす青色と雲の白のおかげで、幾分さわやかに思える。
午後四時。学校では授業が終わり、部活動にいそしむ生徒や勉強のために学校に残る生徒、特に用事なく、帰宅する生徒と生徒たちはおのおのの放課後を過ごす。
ここ苺ヶ丘高等学校でも、半数以上の生徒が部活動のためにそれぞれの場所に向かい、残りの半分以上が家路へとついていた。
「ヒナ、またね」
「うん、バイバイ」
二年生の浅見比奈(あさみひな)も家路へ向かう女生徒の一人だった。特に部活動に所属していないため、まっすぐ家に帰ろうと思っていたところだったのだ。
校門を出て、しばらく住宅街を歩く。強い日光が栗色の髪の色を引き立たせ、肌をじりじりと焼いていく。それを受け、額から一粒の汗が頬を伝い、白い制服の襟に吸収される。
「今日も熱いなぁ……」
汗ばむ顔をハンカチで拭いてみるが、この日差しで一向に汗が引く様子が無い。とりあえず、近くのコンビニに避難し、少し涼むことにした。
と、そのコンビニの前には、なにやら見覚えがある顔があった。
「あ、バルたん、ナチたん」
ヒナはその男子生徒に手をふると、彼らもそれに気がついたのか、手を振り返す。
「やあヒナちゃん、今帰り?」
「うん、暑いから、コンビニでちょっと涼もうかなぁって」
「そう、ちょうど俺らもコンビニ寄ろうと思ってたところなんだ」
バルたんこと柏原流多(かいばらるた)は、ついさっき買ってきたと思われるジュースを飲みながら言う。
「ルタ、何言ってるんだよ。さっきまでコンビニいたのに」
隣にいる、ルタより背が高い男子生徒、ナチたんこと瀬川那智(せがわなち)がルタに突っ込む。
「はっはっは、ナチ君、そんな態度では、ヒナちゃんの裸エプロンを拝むなんぞ、百年早いぞ?」
「裸エプロンが目的かよ!」
ルタとナチのやり取りを見て、ヒナはクスリと笑う。
「もう、バルたんとナチたんは相変わらず仲がいいねぇ」
さすがに日なたにずっといるのは暑かったか、ヒナはコンビニの入口に向かう。日なたから日陰に入ると、一気に別空間に入ったように一瞬ひんやりとする。
「ちょっとジュース買って来るね」
そういうと、ヒナはコンビニの中にゆっくり入っていった。
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