キーホルダーの世界へ

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「いらっしゃいませ」  扉を開けると、とたんに冷たい空気が体に流れ込み、湧き出た汗を一斉に退却させる。  節電が叫ばれる最近だが、依然としてコンビニの中の温度設定と言うのは、それとは無縁と言いたくなるほど快適である。  ヒナはドリンクコーナーからペットボトルのジュースを一本取り出すと、すぐさまレジに向かう。  本当は雑誌を読んで時間をつぶしたいところだったが、今日はそうも行かない。会計を済ませると、すぐにコンビニを出た。  コンビニの扉前では、相変わらずルタとナチがなにやら言い合いをしている。  扉をゆっくりと開けると、入るときとは対照的に、外の熱気がヒナの体を襲う。 「お待たせ~」 「待ってないよ。もう少し涼んでいけばよかったのに」  ルタは飲み干したペットボトルをゴミ箱に捨てに行く。 「いや、でも、二人が待ってるし……」 「いやいや、ルタは待たせて干からびさせればいいんだよ。な?」  ナチがルタの肩を叩いて言う。ルタも「何でだよ」と返す。  それを見て、ヒナは再びクスリと笑う。ルタとナチもそれに気がついたのか、二人して笑い出した。 「そうだ、これからそこの雑貨屋にキーホルダー見に行かない?」  ヒナは先ほど買ったジュースの蓋を開け、クピリと一口飲む。 「相変わらず、ヒナちゃんはキーホルダーが好きだねぇ」  ルタがヒナのかばんを見ながら言う。ヒナのショルダーバックには、十個ほどのキーホルダーがぶら下がっている。 「かわいいのがあると欲しくなっちゃうのよ。家にもまだあるし」  ヒナはバッグにぶら下がったキーホルダーを、いくつか手に取る。猫やイルカといった、動物のものが多いようだ。 「私は今から行くけど、バルたんとナチたんはどうするの?」  半分も飲み終わらないところで、ヒナは残ったジュースをバッグにしまった。 「いや、俺らはいいや。今からナチとゲーセン行くし」 「そうそう、ルタを今からフルボッコしにいくところなんだ」 「はっはっは、それはこちらの台詞だ。ナチをフルボッコして裸エプロンを着せるのだ」 「やめろ布フェチ!」  また始まった、と二人のやり取りを見てクスリ、というかニヤリとするヒナ。 「そっか。じゃあ、そろそろ行くから。バルたん、ナチたん、また明日ね」  二人に手を振りながら、ヒナはコンビニを後にした。言い争っていた二人も、それに気がつくとヒナに手を振って別れを告げた。
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