14人が本棚に入れています
本棚に追加
「いらっしゃいませ」
扉を開けると、とたんに冷たい空気が体に流れ込み、湧き出た汗を一斉に退却させる。
節電が叫ばれる最近だが、依然としてコンビニの中の温度設定と言うのは、それとは無縁と言いたくなるほど快適である。
ヒナはドリンクコーナーからペットボトルのジュースを一本取り出すと、すぐさまレジに向かう。
本当は雑誌を読んで時間をつぶしたいところだったが、今日はそうも行かない。会計を済ませると、すぐにコンビニを出た。
コンビニの扉前では、相変わらずルタとナチがなにやら言い合いをしている。
扉をゆっくりと開けると、入るときとは対照的に、外の熱気がヒナの体を襲う。
「お待たせ~」
「待ってないよ。もう少し涼んでいけばよかったのに」
ルタは飲み干したペットボトルをゴミ箱に捨てに行く。
「いや、でも、二人が待ってるし……」
「いやいや、ルタは待たせて干からびさせればいいんだよ。な?」
ナチがルタの肩を叩いて言う。ルタも「何でだよ」と返す。
それを見て、ヒナは再びクスリと笑う。ルタとナチもそれに気がついたのか、二人して笑い出した。
「そうだ、これからそこの雑貨屋にキーホルダー見に行かない?」
ヒナは先ほど買ったジュースの蓋を開け、クピリと一口飲む。
「相変わらず、ヒナちゃんはキーホルダーが好きだねぇ」
ルタがヒナのかばんを見ながら言う。ヒナのショルダーバックには、十個ほどのキーホルダーがぶら下がっている。
「かわいいのがあると欲しくなっちゃうのよ。家にもまだあるし」
ヒナはバッグにぶら下がったキーホルダーを、いくつか手に取る。猫やイルカといった、動物のものが多いようだ。
「私は今から行くけど、バルたんとナチたんはどうするの?」
半分も飲み終わらないところで、ヒナは残ったジュースをバッグにしまった。
「いや、俺らはいいや。今からナチとゲーセン行くし」
「そうそう、ルタを今からフルボッコしにいくところなんだ」
「はっはっは、それはこちらの台詞だ。ナチをフルボッコして裸エプロンを着せるのだ」
「やめろ布フェチ!」
また始まった、と二人のやり取りを見てクスリ、というかニヤリとするヒナ。
「そっか。じゃあ、そろそろ行くから。バルたん、ナチたん、また明日ね」
二人に手を振りながら、ヒナはコンビニを後にした。言い争っていた二人も、それに気がつくとヒナに手を振って別れを告げた。
最初のコメントを投稿しよう!