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──意識が明滅する。 今自分がどうなっているのかすらも分からない。 立っているのか、寝ているのか、座っているのか。 はたまた水の中でも漂っているのか。 生きているのか……死んでいるのか、それすらも。
視界もはっきりしない為、明るいのか暗いのかもわからない。
だが、少しするとぼんやりとだが、緑色が見えてきた…………草、か?
そこで、ハッと意識が覚醒する。 まるで水中から陸へ上がって息を大きく吸い込んだかのような、束縛から解き放たれたかのようなとても爽快な気分。
おかしい、気絶して目を覚ましたのだから、そんな筈が無いのに。
次いで役目を思い出した目が明順応しながら辺りの景色を伝えてきた。
……なんだ、こりゃ。
声に出なかったのは、まさしく「驚いて声も出なかった」からである。
オレの視界に映ったのは、見渡す限りの大自然だった。 使い古された陳腐な表現だが、そうなのだからそうとしか言えない。
詳しく言うならば、オレの今いる場所はやや小高い丘になっているらしく、辺りを一望できる。 オレの背後にはそこそこ大きな何かの木があり──広葉樹と言うことしかわからない──、前方と後方にこの丘を迂回するルートの道が一本あるだけで、周囲は緑の絨毯とでも言うべき森だった。
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