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彼の周りはうっすらと心許ない光で照らされていた。
しかしその光の範囲外は何があるかもわからないほど真っ暗になっていて、未曾有の世界が広がっている。
その中で彼、立派に伸びた白髪の髭を携えた老人がニタニタと不気味な微笑を浮かべて佇んでいた。
「遂に目覚めたか。
善にも染まり、悪にも染まる、どちらつかずの超越した力を手に入れし者。
『善と悪の片鱗者』」
しゃがれながらも威圧に満ちたその声は、やけに空間に澄み渡る。
ただ老人は、これから起きるであろう惨劇を楽しみにしていたのだった。
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