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「もう、明日には退院出来そうですね」
「まぁね、これで中島くんのおてんばから解放されるわ」
春日井さんは裕翔くんを一瞬見つめ、ふぅ…とため息を漏らす。
専属の看護婦、と言ったがそれはこの病院に裕翔くんが入院したときのみの話。
その時以外は通常の勤務をしている。
「すいません、毎回裕翔くんが…」
「いや、知念くんが謝ることじゃないのよ」
何処と無く申し訳なくなった僕は春日井さんに向かってぺこりと礼をした。
すると、春日井さんは慌てて僕にそう言う。
「それに…中島くんといると、飽きない時もたまにあるし、ね」
時には、こうやって無理矢理寝かせるときもあるけど。
と呟けば、ニコッと笑みを浮かべこちらを見た。
裕翔くんは病院へくると、必ず脱走する。
脱走、と言っても病院内を徘徊する程度だが。
けど、裕翔くんはここでは特別な存在。
むやみやたらに外へ出られては困る。
もう少し、彼には自覚をもって欲しいものだ。
自分は普通の人間とは違うこと。
「…ですね」
春日井さんに向かってそう呟けば、僕は寝ている裕翔くんの頬を撫でた。
つい数日前まで、大きな火傷があった頬を…。
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