▼軍事試験まで

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「フンフンフーン」 自作の曲を鼻歌しながら病院のある一角を歩く。 片手に握られたビニール袋はカサカサと少々耳障りな音を立てた。 「ヤッホー、裕翔くん」 『特別病室』と書かれた部屋に入り、軽やかに声を掛ける。 「あら、知念くん。こんにちは」 「こんにちは、春日井さん」 病室で花を飾っていた春日井さんに軽く返事をした。 春日井さんってのは、裕翔くん専属の看護婦さん。 まぁ、専属って言ってもそんな怪しい関係ではないけど。 「裕翔くんは?」 「寝てるわ。というか…寝かせたの」 「あぁ、また脱走を」 「そう。困ったものよね」 春日井さんの話を聞きながら、裕翔くんが寝ているベッドに近づく。 数日前に出来た無数の傷口は、跡形もなくなくなっていた。 _
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