一夏戦争

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メールが返ってきてから10分ほどが経ち、部屋の戸が叩かれた。 待っている間に始めたトランプを捨て場に投げる。 手札が良かったという水澤の不満に耳を塞いだ。 ノックに対し、入って良いと言うとドアが開かれた。 必要はないのだろうけれど、ノックをすると云う決まりはこうして守られていた。 いったい誰が言い出したのかわからない、破ったところで何か言われることもないその決まりを4人全員が守っているところを見ると、意外にもマナーがなっていることが分かる。 性格的に守りそうな人間といえば、長谷部くらいのものだろうに。 ういと、彼女なりの挨拶をする。 挨拶を返している間に扉は閉められた。 少し待ってみても、突然と呼んだことに対し彼女の口から文句は出てこない。 「無理に来させて悪かった。部長が何かしたいらしいから呼ばせてもらったんだ」 「うん。張り切って起こされたから驚いた。いもうとこわい」 「僕の所為、だよな。でもそうしないとお前、何しても起きないからな」 宮古は頷く。 携帯が何十回とゆれたところで起きないことは分かっていた。 起きていたとしても場所が遠いとか、目が疲れるとかで見ようとしないのだから携帯を持つ意味はないと言える。 きっと、今は部屋の飾りとして役に立っていることだろう。 「家族の会話は電話ですれば良いだろうが。本題に入らせろ」 水澤が口を挟む。 今まで何匹もの虫を退治してきたような、そんな冷たい視線を送ってきた。 「しかしまあ、お前とも無駄話をしたけどな」 「無駄?有意義だったさ。」 ついているという下ネタだったのは、どうやら僕の記憶違いだったようだ。 その場を仕切るように水澤は、長谷部を指差した。 「それじゃあ部長、話して良いぞ」 長谷部は小さく声を漏らした。 自分に話が振られたことに驚いているのだろう。 ええとと二、三度言って落ち着いた後、彼はやりたいと言ったその内容を話す。 「卒業制作、っていうのかな。夏休みの間にね、何かをやりたいなって。駄目、かな?」
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