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2.キャリアウーマン?・・・香山 貴子
「ちょっと!アンタ達がケガでもしたらウルサい奴らが乗り込んできて、面倒な事になるんだから大人しく遊んでなさい!」
と、言ってやりたいのをぐっとこらえ、言葉を飲み込んだ。
私の名前は香山 貴子。
かやま たかこ。
私たちが子供の頃は、親達も、子供達も、「先生」と呼ばれる人に、多少は尊敬の念があったような気がするが、今の親達ときたら、子供達をちょっと強めに叱ろうもんなら「なんでウチの子にだけそんなに怒るのよ!」なんて見当はずれなクレームを平気でつけてくる。
俗に言う、「モンスターペアレンツ」。
そして、私もどちらかというと気が弱いほうではなく・・・カチンときて、反論すれば、次は校長室に乗り込んでいく。
自分の子の悪い所を直そうなんて気はサラサラないのだ。
そんな非常識な親に育てられた子供達がつくる「日本の将来」に、希望なんて持つだけ無駄だろう。
教師になりたくて、熾烈な競争率をなんとか乗り越えて、教壇に立ってみれば、実際の教育現場は最悪と言っていい位に荒れ果てていた。
それでも念願の教師になり、夢もあった駆け出しのころは、「私がこの教育現場を立ち直らせるのよ!」
なんて、親友達と熱く語ったりもした。
今考えると、笑っちゃうくらい真っすぐだったなぁ・・・
今は、給料日にちゃんと給料が振り込まれてさえいれば、もう、どうでもいいって感じになっている。
それなら教師である必要はないものの、今更、他にしたい仕事なんてないし、いい人見つけて結婚して早く辞めるつもりで・・・もう十年以上続けている。
チャンスがなかったわけじゃないが、結婚しようと思っていた人と別れてしまったのが今だに尾をひいている。
大きなきっかけがあった訳じゃなく、いろんな気持ちの行き違いで別れた。
そのときはそんなつもりじゃなかったが、今思えば、わがままをたくさん言った私に彼が言っていた言葉の意味が分かるし、感謝もしている。
別れたからこそわかった。
そのまま結婚していたら、今もありがたみのわからないわがままな女だったかもしれない。
だけど・・・やっぱりこの年で独り身は堪える。
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