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3.高井清の妻 「秀子」
「じゃあ、行ってくるよ!」
いつもの朝の風景。
「ちょっとアナタ!ゴミ出して行ってっていったでしょ?ちゃんと持って行ってよ!」
「わかったって!でかい声出すなよ!じゃあいってくる!」
と言ってドアを閉める。
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夫を見送り、私はもう一度布団にもぐる。
ダラダラしようなんて気は全くないが、最近とても疲れやすい。
ストレス性のモノかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
更年期障害なんて年でもないし、現に病院に行って検査しても「異常なし」。
ほんとなんなんだかね。
私の名前は「高井 秀子」
タカイ ヒデコ。
子供の頃から何不自由することなく育てられてきた。
家はソコソコ厳しがったが、あくまでソコソコ。
何かあれば、近くに住む、祖父母のところに逃げ込んで、親の悪口をいい、ほどほどで祖父母に取りなされ、自宅に帰る。
そんな感じで、のらりくらりなんとなく真っ直ぐに事に当たることなく過ごしていった。
なにかに一生懸命っていう経験はあまりなく、興味のあることはやってみて、面倒になってくるとやめる。
一人っ子だったから、親の愛情も、期待も、お説教も・・・全部ひとり占めだった。
なんて、そんな風に周りは私を分析するが、私自身、感謝もしているつもりだし、当たり前だなんて思ってもいないつもりだ。
まあ、一人暮らしの経験がないから、周りのしてくれていることが特別なことだと感じることはないのも事実だが
。
「昼になったら、ちょっと買い物にでも行こうかな」
昨日も外に出ていないから、今日くらいは出ておきたい。
ずっと出ないでいると、出るのが億劫になってしまう。
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昼になったが、体が重く言うことを聞かない。
ゆっくりと準備をし、買い物に出かける。
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