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4.一つ目の交差点で
同じような毎日だが、実際に同じ日など二度とない。
当たり前だが。
受付の子が会社を辞めた。
社内恋愛の末に居辛くなったということはだれの目にもあきらかだったが、誰もそのことには触れなかった。
なぜなら、その相手の男はまだ会社に居るからだ。
しかも、その男には妻子があり、女性側にも、夫は居ないが子供が一人いる、いわゆるバツ1と呼ばれる部類。
誰にもばれずに続けていられるなら勝手にしてくれればいいが、男のほうは妻子があるにも関わらず嫉妬心大せいに彼女を束縛していたようで、周りにもバレバレだった。
他の男性社員と接するのはおろか、話すことも、近づくだけで彼の嫉妬心を煽ってしまうらしく、昨日楽しく話していたのに、次の日には目も合わせないというような極端な行動を彼女はとる。
周りは、そんな彼女を普通なら「変な奴だな」という目で見るだろう。
だが、彼が彼女に対して嫉妬心をぶつけた結果、彼女がそういう行動をとっていたことは皆わかっている。
ほんとうにどうしようもない男だ。
ただ、彼は就業時間のほとんどは営業という名目で外に出ており、ほとんど顔を合わせることはない。
やはり彼もかなり居辛い状況にあることは間違いなさそうだ。
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「新しい受付の子、今日からだってね。」
下村は興味があるようなないような良く分からない感じでそう言った。
「なんだよ下村?新しい女の子が入社する日に微妙な感じだな?」
普通なら「どんな子かな?」とか「早く来ないかな?」じゃないのか?
と思っていると下村が、
「30超えてんだってさ。俺、ちょっとがっかりだなぁ!」
なるほど。
そういうことか。
「しっかり仕事してくれりゃ何歳だっていいじゃねぇか!」
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