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私、死国琥珀は死神だ。
元は人間だったのだが、閻魔様にスカウトされ、転生する事なく死神としての仕事をしているのだ。
……まあ死神の仕事といっても、いつも人間界に降り立っては、死んだ人間の魂を天上に送るくらいなのだが。
「ニコちゃんニコちゃん」
天上にて、私がいつものように人間界に降りようと支度をしていたら、閻魔様に捕まってしまった。
閻魔様に捕まると人間界のお土産をせがまれてしまうから、黙って行こうと思っていたのに。
ちなみにニコちゃんというのは私の愛称みたいなもので、死国琥珀、しくにこはく、しく『にこ』はく、から来ているらしい。
閻魔様しか呼ばないけど。
「なんでしょうか、閻魔様。ちなみにお土産は買いませんよ?」
「なん……だと……」
この閻魔様、人間のイメージとは違い、見た目は二十歳前後の青年である。見た目は。
その姿でそんな残念そうに言われても、心になんにも響かない。
「じゃ、人間界行ってきますので。私がいないからって仕事サボらないで下さいね?」
「無理だよ……。僕のモチベーションはニコちゃんの言葉で砕け散ったから……。……お昼寝してくる」
面倒だなぁ……。
こんな人が(人じゃないけど)、私の上司だと思うと悲しくなる。
「……ちゃんと仕事していたら、ひょっとしたら買ってくるかも知れませんよ?」
「うへ~……分かった」
閻魔様はサボりの常習犯だから、効果は薄いだろうけど。
てか、私は閻魔様のお母さんじゃないんだけど。
「じゃあ、改めて行ってきます」
「いってらっしゃ~い」
こうして、いつも通りに私の仕事が始まったのだった。
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