3話~躑躅森優真のバイト~

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 入学しておよそ一ヶ月が経ち、高校の生活に馴れた僕は隣町の飲食店でバイトを始めた。  小遣い稼ぎの為でもあるが、こういった職場で働いて社会的に自立できるようになるのが一番の目的だ。  そして稼いだお金は参考書等に使うつもりだ。  週末のバイトではあるけどそれなりに充実している………とは残念ながら言えない。  むしろ後悔している位だ。  営業時間も給料も仕事内容も全く問題ない。  ただ不満があるとすれば…  「躑躅森!No.15の客から依頼された十人分の兵糧の準備が完了した!直ちに出動せよ!」  「ラジャー!」  そう、店長が軍人オタクである事であることだ。  この飲食店は店長の趣味で作られおり、下手すれば自衛隊のキャンプと間違えられそうなデザインである(てか間違えられた)。  ちなみに先程の兵糧という単語はこの店ではオリジナルメニュー(例:ソルジャーバーガー)を意味している。  余談ではあるが注文されたのは店の中でも大きなジェネラルバーガー(1個1Kgサイズ)である。  …それが十人分ですとっ!?  マテマテ、そんな巨大なハンバーガーをどうやって運べば良い?  「あの店…隊長!兵糧をどうやって輸送しますか?」  駄目だ…今だにこの店での言葉遣いに慣れない…てか、かなり恥ずかしいよ!  「食材を調達する際に使用した段ボールがある!それで輸送してくれ!」  段ボールて…、それ大丈夫なんですか?  よく見たら『大地の恵み 田畑農園』というロゴが書かれてるし…これ、明らかに駄目だろっ!  「何をしてる!早急に運べ!」  「申し訳ありません隊長!」  …仕方ない。文句言われたら隊長を呼ぼう…。  そう思いながらジェネラルバーガーを段ボールに積み、15番の机を見ると大きなアフロと丸縁眼鏡、そして力士のような肥満体型が特徴的な男性が一人で座っているのが見えた。  注文が間違えて無ければこの量の一人で平らげる事になる。  「お待たせしました!こちらがご注文のジェネラルバーガー10個になります!」  「随分遅かったな…。それに、その段ボールはなんだ?」  やっぱりクレーム言われた…。  「申し訳ございません!準備に時間がかかってしまいまして…運ぶにも時間がかかってしまうと思いまして…」  「おい貴様。」  嗚呼…もう駄目だ!!
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