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(うっるせーー!)
悲鳴とも奇声ともとれない声が部屋に木霊する。木造部分が多い為か声は自然と吸収されてしまう。
その声と同時に勢い良く手が降られる。
だが、虚しくも空気を切った。
(えっ?)
反対に振り下ろされる手も同じ空間で軌道を描く。
(あっ!?)
当たると確信をしていた男の脳内は混乱を始める。
(あっえ? 目が見えないどうなってんだ?)
(家だよな?)
その時、男の耳に数人の声が入った。
目の見えない男に言いようのない不安が襲う。
周辺には数人の影が出来ていた。
(おい! 誰だよ人の家に入ってんのは!?)
(目隠ししやがったな!?)
男は負けじと手を振り下ろすが、手は何の感触も得られずに元の位置に戻る。
「おぉ、元気のいい子。これなら立派に育ってくれそうね……」
不意に女性の声が聞こえた。
透き通った綺麗な声は何故か時折濁っている。
(えっ、なんで泣いてるん……です……か?)
彼の思考はそこで暗黙に包まれてしまった。
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