第一章

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~桐生空side~ 颯 「ねぇ~空」 空 「あ?」 颯 「頼むから1回モデルやってみない?」 空 「嫌だ。何で俺がやんなきゃなんねぇんだ」  声すらも艶やかさを醸し出す空の声。そんな彼等は屋上のフェンスに寄りかかり煙草を吸いながらそんな会話をしていた。 颯 「なぁ~頼むよん。空が出てくれると1シャッター10万まで上がるんだよん」  写真1枚で10万。それほど欲しい写真だという事だ。それ程反響があると言う事でもある。 空 「うぜぇ」 颯 「空ち~ん。俺っち助けると思ってさ~。なっ頼むよん」  颯は空の前に移動し両手を合わせてお願いしている。 空 「……五月蝿い黙れ」  空は颯を視界に入れてバッサリと言葉で一刀両断した。 颯 「空のいけず…ケチ」  颯は少し拗ねた様にプイッとそっぽを向き空の隣に移動しフェンスに背中を預けた。 空 「何とでも言ってろ」 “ブゥッブウッブウッ…パカッカチッ”  突然、ブレザーのポケットからバイブ音が響く。ワイシャツはズボンから出し第2牡丹まで外れ筋肉質な胸元が見えそうで見えない。首からは純金製のシンプルなネックレス。トップにリングがぶら下がっている。ブレザーは袖を通すだけで牡丹など締めない。様になる着崩し方だった。 空 「あ?」  空は携帯を耳に持って行き口を開く。右耳にはクロスの純金製ピアスが付けられている。 〇〇 『総長。今お時間大丈夫でしょうか?』  通話の相手は光龍のメンバー。きっちりとした敬語で話を進めている。 空 「あぁ」 〇〇 『今日の集会欠席させて頂きたいのですが……宜しいでしょうか』  空、颯は光龍メンバー5千人の顔と名前を把握している。昔からの面子も居れば空が総長になってからの面子も居る。勿論空も颯も光龍メンバーを信頼している。 空 「女か……生まれるのか?」  受話器越しのメンバーが涙声になり小さく頷く。 空 「そうか。お前も父親か…しっかり着いててやれ総長命令だ」 〇〇 『はい…はい……有り難う御座います』  空達は例え些細な会話でも記憶している。メンバーの現状1人1人。それも惹かれる要因であり尊敬の要因なのだろう。しかし空だけは怒らせては行けない事をメンバー全員理解している。 空 「あぁ早く行ってやれ。産まれたら見せてくれ」 〇〇 『はい……勿論です。それでは失礼します』 “ブチッ”
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