恋人

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――――それは、俺の被っていた化けの皮が、限界に近付いていた大学4年の頃。 俺の携帯に、健康学科の仕切り屋の女から一本の電話が掛かってきた。 その時俺は、最後の全日本インカレ(全日本インターカレッジ)に出るために、必死こいてピッチ走の練習をしていて、それどころじゃなかった気がする。 『なあ、岡田!! お前浜口のことなんだと思ってんの!?』 「……は?」 部室の裏で電話に出たら、怒鳴り声と共にいきなりお前呼ばわりされて、俺は携帯の液晶画面を二度見した。 ……誰だっけ、こいつ。 『は? じゃねーよ! お前、浜口と大阪旅行行く約束してすっぽかしたろ。いきなり携帯音信不通になるし! 浜口、あたしのとこに泣いてきたんだけど。ねえ、なんで!?』 「……ああ」 クレーマーのごとく電話先で怒り狂っている女をよそに、思い当たることのあった俺だが、妙に冷静に「長くなると面倒だな」と考えていた気がする。
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