恋人

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「やっぱカッコつけてないで、ケー番くらい聞いときゃ良かった」 「はあ」 頭を抱えて項垂れる俺の目の前で、ロクに手をつけず行ってしまったゴウのコーヒーを勇希が啜っていた。 「もうあんなチャンスないわ」 「さっきから何べん同じこと言っとんねや」 ブツブツお経のようになってきた俺の一人言に、ツッコミを入れるのも面倒になってきた様子の勇希は、右手の小指で耳の穴をほじっていた。 「やっぱ俺、もういっぺんでいいからゴウとやりたい!」 「じゃあ、やってくればいいやろ!! ゴウのメアド教えようか?」 俺がもはや叶わぬ願望を口にすると、面倒くさそうな顔をした勇希が俺を追い出したいような感じで、カフェの出口を指差した。
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