名無し荘

10/47
前へ
/47ページ
次へ
 なぜ10個も持っているかというと、教室に来るまでにたびたび呼び止められては「りっくんこれあげるー」といって僕の鞄に強制的に可愛らしい箱を入れていくのです。「ありがとう、嬉しい」と、お返しどうしようと思いながら返事をするのですが、「いいよいいよー。あ、お返しもいいよー」とみなさん一様にそう言って去っていくのでとても助かります。  あっという間に昼休み。自炊はまだ慣れていないので弁当はなし。食堂へ行くとしよう。 「りっくん、ちょい待って」 「あ、悠一くん、君も食堂に?」 「そうなんだよ。母さんが、あんたバイトしてるんだから、自分でなんとかしろ! だと。だから食堂行くなら一緒に行こうぜー」  川瀬悠一くんは僕の中学一年生からの友達で、以来ずっと同じクラスという奇跡的な関係の友人だ。こんなことを奇跡なんておこがましい気がするけれど、僕たちにとっては奇跡みたいなものなのです。  なかなかに広い食堂の、丸いテーブルに座り僕は唐揚げ定食を、悠一くんはあんかけチャーハンを食べていました。 「りっくん、なんであんなにチョコもらえんの? 本当謎なんだけどさ」 「うーん、なんでだろうね」 「みんな話したことのある人?」 「そうだよ、一日一回は話しているんじゃないかな」 「え、あの人たち全員と?」 「そう」
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加