名無し荘

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「大丈夫、手は消毒してあるから」 「…………はい」  意を決したように目を閉じ、大きく口を開ける正座の倉敷さん。なんだか悪くて怖いことをされると勘違いしてないかな。僕はただ怪我を手当しようと思ってるだけなのですよ? 襲うような趣味は持っていないのだからさ、そんなに怯えなくてもいいと思うんだよ。  なんだか緊張している中、手を彼女の舌に這わせてく。 「はっ……ぁぁ……」  あれ? 僕、いけないことしてる? いや、思考をそっちに持っていってはダメだ! 平常心……平常心……。 「はぅあっ! …………ぁ」  なぜ僕はあんなことを言ってしまったのだろう。そしてなぜこんなことをしているのだろうか。僕の中身は健全なはずなのに! 「……お、終わったよ……どう、倉敷さん?」 「はぁ……なんだかすごくふわふわしました。まるでりーさんといけないことをしてるかのようでどきどきもしてて、ほら、心臓がばくばくです」  倉敷さんは自分の手を胸にあてて高鳴っている鼓動に集中している。その様子が可愛くて仕方がなくて、ペットを愛でたくなるような衝動に駆られてきた。僕は紳士になるんだ。そう決めているのだから、彼女の断りもなしに抱きついて頬をすりすりしてなでなでしていいわけがないんだ。
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