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木下さんの言葉を真摯に受け止めたのだろう。倉敷さんは僕の上からどいて少し離れ、木下さんに向かい正座に座り直した。
「木下さん……いいえ、ゆずさん。私がりーさんをよく知らないのは事実ですが、これだけはわかります。りーさんは今の私を一人の女性として見てはくれない。でも、女の子として愛でてくれる。それで私が、幸せで温かい気持ちになれるんです。この気持ちは恋以外の何ものでもありません。それを否定するのですか」
木下柚月さんと倉敷桃子さん、二人のこれは、言うなら親子喧嘩みたいなものなのだろう。僕が口を出していい場面ではないので、黙っていることにします。
「否定なんかしないよ。恋っていう気持ちは否定しない。けれど桃、恋に恋してないかい? 最近の小学生はませたガキどもばかりだ。浮ついたものにもてはやされて、桃は恋にかじりついてはいないって言えるのかい。相手を見ない恋などただのお遊びさ。それはりんごくんにも自分にも失礼なことだよ」
倉敷さんはうつむき、表情が窺い知れない。考え込んでるようだ。数秒の間を置いてからぽつりと漏らす。
「……わ、わたしだってこいぐらいするもん…………」
あれ? 様子が変……大人らしさが少し欠けているような、いや、見た目は小学生ですけれど。
「ゆずちゃんが考えているようなこと、思ってない! わたしはりーさんのそばにいたいだけなんだもん! これはじゅ・ん・あ・い――なんだもん!!」
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