名無し荘

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 翌日2月13日日曜日午後6時、なんと、みなさんが歓迎会を開いてくれると言うので、お言葉に甘えてアパートのすぐ隣にある大家さん宅にお邪魔することになりました。 「やあ、いらっしゃい。みんな揃ってるよ」  丸井さんが玄関を開け、迎えてくれる。 「立派な一軒家ですね」 「そうかい? ありがとう。きみもなかなかいけてるよ」  どんな死語的お世辞ですかい。 「いらっしゃい、りっくん。丸井の奥さんの料理は絶品だぜ」  あなたはなぜ半笑いなのですか、絡繰さん。 「絡繰、お前食べるの早すぎだ。りーくんをまってからだったはずなんだが」 「いいじゃないすか。俺、今日も出勤なんすよ。あと一時間ぐらいしかいらんないんで」  もう少し早く出てもいいのではないでしょうか? 「とりあえずそこに座って。さあみんな、歓迎会を始めよう!」  案内された椅子に座ると、ぱんっぱんっとクラッカーが火を吹いた。ちょっとびっくりしました。  集まっていた、川田さん絡繰さん網野さん組坂さん木下さん倉敷さん大野さん上村さんコンビに丸井夫妻の計11名が僕のことを歓迎してくれた。こんなに嬉しいもんなんだ。だけど、あれ? 一人足りない気がする。 「40号室の雨宮さんは私用で欠席なんだ。伝言を預かっているよ。『りーちゃん、これからよろしく頼むよ。お隣さんどおし、といってもそんなの関係なくなのだけど、仲良くやろう。今日は欠席ですまないね』とのことです」  丸井さんが読み上げてくれたその内容は、なんだか男前な人だと思った。
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