名無し荘

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 今日は、なぜか女子が男子にチョコを上げる習慣のある日です。子供の頃から不思議に思ってましたが、男子はどうしてこんなにも楽しみな顔をしたり、恨めしそうな顔をするのか、僕には不思議でたまりません。それはさながら、武力を掲げて敵の陣地を乗っ取りに行くかの如くですよ、はい。  しかしなんででしょう? さっきの謎より全く持って謎なのが、高校一年のこの日、僕の下駄箱には愛らしい箱が手紙を添えて置いてあり、「あなたのことが好きです。大好きです。好きすぎてちょっと困ります」と書いてあったことだ。いや、困られてもちょっと……とは思いました。しかも名前が書いてなく、思い当たる節もないので、こっちが困ってしまってます。いわゆるこれは告白なのだろうから、後日何かアクションがあるだろうと期待したのですが、なんの音沙汰もなく一年が経ってしまいました。  そして今日この日、再び目の前の下駄箱には愛らしい箱が。手紙も入ってる。ちょっと開いて読んでみよう。 「あなたのことが好きです。大好きです。好きすぎて大変まいってます。一年間あなたを追いかけていましたが、やっぱり好きです。私はいつもあなたのこと見守ってます」  名前がまたも書いてない。というより好かれすぎて嬉しい。多分これは無償の愛を僕に注いでくれているのでしょう。ああ、感謝します神様。思えばあの頃から僕には春がきていたのですね。もういっそのことどこかに入信してしまいましょうか。……お父さんが許さなさそうなのでやめておこう。
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