本屋と本屋で

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「……正直、大学で読書感想文を書くとは思わなかった」 盛大な独り言を発し、オススメの本と掲示された棚を一人ウロウロしていた。 本なんて読む方ではない。 一人暮らしにとって、本を読む時間も余裕もない。 大学で読書感想文は存在しないなんて思い込んでいた自分が憎い。 悶々と考え込みながら、本の背表紙を撫でていく。 伊坂幸太郎、宮沢賢治、いやそれとも夏目漱石か。 「読書感想文、ですか?」 「え?ああ、はい」 驚いたのは、それは突然話しかけられたからではない。 声をかけてきた男が長身だったからだ。 体格がいい、というよりはひょろっとした細マッチョのようだ。 多分天然パーマだと思われる実感ウェーブのかかった綺麗な髪。 「やっぱり!そうかと思って感想文にしやすい本を持ってきました!」 太陽みたいな、という表現が見事に当てはまる笑顔を、本を差し出しながら俺に向けた。
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