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「ぬあ゛あぁー!!、こめかみがっ…!」
こめかみの両側を物凄い締め上げられている。
「ギブ…です…」
しばらくして、ようやく開放された。
「口は災いの元よ。」
開放されてもなお、ミシミシと嫌な音が脳裏にこびり付いていた。
「っくす…」
そんな光景を見ていた澪から、小さな笑い声が零れる。
「勇耶が、っふ、ぬあ゛あぁーって、っぷ…」
どうやら澪のツボにはいってしまった様だ。
澪に釣られるたかのように平沢さんも笑いはじめる。
「あんなゆうくん、はじめて見たよ、あはははっ。」
それに釣られて田井中さんも、
「確かにこれはいいものを見たな、ププッ」
挙句には箏吹さんまでが…
「彩千くんにも、あんな一面があるんだね、っふふ。」
(しかし、そんなに珍しいのか…、)
だが、思えばこうして皆が笑っている姿を見るのは初めてだった、これが俺の知らない、本当の軽音部の姿なのだろう。
初めて見た自分が感じた確かな思い、
『軽音部の皆にも、澪にも、ずっと笑っていてほしい。』
記憶を失う前の自分も多分同じ事を想い、願っていたのだろう。
その想いが形を変えて、失った自分に残ったのかもしれない。
(澪を連れてきて良かった、うん。)
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