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「………ねぇ、実くん」
「ん…?」
行為を終え、汗ばんだ額の汗を拭いながら櫻井 麻友は口を開いた。
それに答えるのは、小さい頃からの幼なじみの、佐藤 実。
「…なんで、」
「…」
「なんで、私なの………?」
小さく、小さく呟いた。
実は、容姿もいいし、学校でもモテる人間なのに、私なんかを相手に選んだ。
「…またそれ?」
「だって………」
何度目の問い掛けか分からない、同じ質問を彼に投げ掛ける。
呆れたような返答なのに、それでも優しく微笑んで、頭を撫でてくる彼が、私は好きだった。
「あんまり考え込むなよ…」
髪を弄ぶ長い指が好き
優しく微笑んだ、その顔が好き
甘い甘い声が好き
…ねえ、好き…。
彼は、私を恋愛対象として見ていないなんて、分かりきってた。
ただの、欲望の処理のための道具でしかないことだって、分かってた。
でも、嘘でもいいから
「愛してる」「好きだよ」「麻友だけ」
って、言ってもらいたかった。
"特別"が、欲しかった。
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