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ヤマ兄も少しだけ腰を折って、あたしの顔をまじまじと見ていた。
「あっ。あたしも、ごめん」
「帰るか」と、言うとあたしの手を黙ってとって繋いだ。
聞こえてなかったのかな。さっきの会話。
それとも聞こえていない振りをしているのかな。
また誤解してたら嫌だって思って伝えたいけど何も言わないってことは聞こえなかったのかもしれない。
あたしがさっき言ったこともあまり理解していないのかもしれない。
だから無言で時間を繋いだ。
先に口を開けたのはヤマ兄だった。
「アサ」
「んっ?」
「気持ち疑ってごめんな」
心から謝っていると感じた。その申し訳なさと寂しさをかけあわせた様な目で見てるからかな。
だからか、あたしの怒って哀しくなっていた心に平静さをもたらした。
「ううん。……なんであんな風に思ったの?」
「アサにキスしようとしたら拒まれたりとか、話しても素っ気なかったりするから、気になってた。ずっと」
「ずっと?でも、拒んだことなんかないよ?」
「この前、リビングにいたとき覚えてない?」
「リビング?」
「アサ、風呂上がりにさ」
「……あっ」
キョウにつけられたアザみたいなキスマークが気になった日だ。
「あの時の顔が俺に怯えてるみたいでさ、ショックだった」
「怯えてないよ?」
「その前にも首にキスしたら嫌がっただろ。部屋で」
「……んなこと」
ないとは言えない。気にしてたから、ヤマ兄と少し距離を置いてた。それをずっと気にしてたんだ。
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