好き。

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あたしには向けられない〝好き〟という感情。 心どころか、身体も黒い雲で覆われてしまいそうだ。 大雨洪水警報が涙腺から発生。 無駄に息を止めた。 「ケ……ケーキ食べようかな」 聞いてられなくて、すぐ後ろにあるテーブルの上に置きっぱなしにしていたケーキのお皿を膝の上に置いた。 「俺にも一口頂戴」 「あたしにあげたのに?」 「いいだろ、一口」 「仕方ないのぉ。じゃあ、もう一回、火つけようかな」 「またかよ?」 「うん。だって今日しか火消せないもん」 ヤマ兄がライターの火をつける。 お互いの顔がさっきよりはっきり見える。
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