好き。

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「ナナちゃんに……ヤマ兄と兄妹じゃない様なこと……遠まわしだけど言われたことあるよ?」 だからって、どうにかなるわけでもないけど。 心が空洞になった気分。 ヤマ兄の手をそっと自分の手で離した。 されるより、するほうが傷付かないから。 「ライター」と言うと、無言で手渡された。 黒い着火ボタンを下に押すと、火がつく。 テーブルにケーキを乗せたまま、ろうそくに火を灯した。 「アサは知らないだろ?」 「……何を?」 「お前が今したことで俺がどう思ってるかさ」 返事はしなかった。 そんなのあたしが言いたいよって心の中で言っただけ。 「手、離すなよ」 そう言うと、また手を握られた。
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