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「言いたくない。時間ないから行くね」
「キョウ、待ってよ!」
離してしまったキョウの袖をもう一度掴もうとする前に、キョウはまた振り返った。
「あーちゃんだって、隠してることあるでしょ?」
「……」
「それなのに、自分だけ知りたいなんて都合良すぎる」
はっきりそう言うと、キョウの足があたしから離れて行く。
その後ろ姿が、遠くなっていくせいか、あたしは喧嘩をしたあの日よりも、
「関係ない」と言われた日よりも遠く感じてしまった。
あたしの隠していること。
ヤマ兄のことしか思い浮ばないけど。
やっぱりそれに気付いているってことだろうか。
だけど、それをキョウに言っていいのかもわからなくて。
答えが出ない感情が胸の中で生まれてることにしか気付けなかった。
今、ひとり。
だけど、誰にも話せないことがあるあたしは何処にいてもひとりみたい。
気持ちを人に教えれるって羨ましい。
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