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だけど、「どっきり」って言われなかった。
代わりに、「無理」って響く様な声がした。
「無……無理って言わなきゃわかんねーだろ」
「しっ……失敬な!」
そんな熱い声とは反対に、「お前らにやるわけねーだろ」って冷めた声がする。
だからか、一瞬ザワつくのがわかった。
なのにその声は、気にすることもないのか、
少し遠くにいるのだろうあの方に、呼び掛けただけだった。
「カマ!お前の好きなイケメンって奴がいるぞ!」って。
「あらー!あたしも参戦していいのね!」
指をくわえて見てたカマさんが近くにいたことさえ気が付かなかったけど。
いつから来てたんだろう。ヤマ兄。
気が付かなかったよ。
だけど、振り向けなかった。
ただ俯いたあたしの手を強引に引っ張るから、着いて行ってしまう。
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