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「ごめん。でも大したことないから。気にしないで」
えへへとまた笑ってみせる。
ギュッと繋がった手に力が込められると、「ちょっと、こいつ借りてく」とヤマ兄が言った。
「へっ?」
文句が言えないくらい強く腕を引っ張られてヤマ兄に衝突した。
「いたっ」
そこで、ようやくあたしは顔をあげて、
目深に被ったニット帽の下にある、眼鏡の奥の瞳と目があった。
睨まれてる気がするのに、あたしは泣きそうな程、嬉しかった。
会いたかった。
今朝、隣の部屋で眠ってたのに。
可笑しいかな。
手を繋いだまま、校舎の中に入る。
ニット帽からはみ出た襟足にじゃれつきたいと思った。
やっぱり、好きだよ。
どうして来たの?
言いたい言葉があるのに、今は声に変えれなかった。
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