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「自分のこと話すの、苦手」
ふいに、心のカケラをポロリと落とした気がした。
あたしは、少ししてようやく拾えた。
「え?」
「苦手」
「……うん」
ギュッとヤマ兄の服の袖を摘んでしまう。
「だから、人に話してないのに自分のことを理解して貰おうなんて思ってない」
「うん」
「アサだって、俺に言えないことあったろ?
何かあった?って聞いてもないって言うくせに、不機嫌な顔してるし。
たぶん俺のせいだと思うけど。
さっきの様子じゃさ。どうも、人より人に対する意識が低いんだろうな」
レンズの奥の瞳が、いつもより寂しげな色を醸し出してるから。
「……ごめん」
って思わず言ってしまった。
ヤマ兄はいつも感情を見せない様に気をつけてる人なのに。
それを少し聞いただけなのに。
ぐっさり、でっかい刺があたしの体に突き刺さったみたいで。
一瞬、ヤマ兄から目を背けたくなった。
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