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またやってしまったと思ったのは土曜日の夜だった。
「ヤマ様、申し訳ござらぬ」
「何が?」
勉強中のヤマ兄が椅子をクルリと反転させて土下座するあたしを見下ろした。
「キョウに明日、映画誘われてたの忘れてた」
「……」
「申し訳ござらぬ」
「アサの物忘れは重度だな。俺はいいけど」
「えっ?」
驚いて顔をあげてしまう。
「三人で映画でも行く?たまには」
キョウには悪いけどヤマ兄と二人でデートしたかった。
あぁ、甘い時間は訪れないのかな。
とか思いつつ、ヤマ兄との接近戦を少し拒んでいる。まだキョウにつけられたキスマークが消えてないから。
って、ヤマ兄とはおやすみのキスしかしてないし。そんなとこ触れられることはないんだけど。
やっぱり、ヤマ兄にこのことを言ったら怒りそうだし。
あんなタカ兄でさえ、ちょっと機嫌がおかしかったし。
キョウからヒント貰ったけど、結局ますます答えが分からなくなった。
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